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のんびりやってます

エロゲ文化が最後の輝きを放っていた頃を過ごしてみて

以下のシロクマ先生の記事を読んでいたら、私自身の懐かしい記憶が蘇ってきた。

p-shirokuma.hatenadiary.com

私自身も実はエロゲをある程度の数をプレイしており、結構気に入った作品も多い。しかし、こういうプライベートすぎることはあまりネットに公表すべきではないと思い、今まではあまり言及してこなかった。ただ、せっかくシロクマ先生がカミングアウトされたようなので、ついでと言っては申し訳ないが私もエロゲについて書き記してみたい。以下の文章は完全に自己満足のために書いているだけなのかもしれないが、とりあえず記録として残してみる。

 私とエロゲの出会いは何と中学生の頃になる。2005年前後の地方の中学校での出来事だ。私がある日パソコン部に行ってみると、何やら男子連中が集まって騒いでいた。私が近づくとどうやら格闘ゲームをパソコンでやっているようだった。何かと思い詳細を聞いてみたが結局明確な答えは返ってこなかった。

後から知ったことだが、これはエロゲのキャラを登場させた同人ゲームだったようだ(確か月姫だったと思う)。この時はこの経験がエロゲとの初めての接触であることに気づくことはなかった。

その後友人たちの間で奈須きのこの『空の境界』がやりとりされるようになっていった。私も借りてみて上巻を呼んでみたが、まったく文章が受け入れられず途中で挫折してしまった。友人はしきりに読むように勧めていたが、結局最後まで『空の境界』を読むことはできなかった。18禁エロゲの売買は一部の男子間で盛んだったようだが、私は中学生の頃までは、まったくその裏世界の動向を知らずにいた。そもそも私は自室にパソコンを当時は持っていなかったので、そんなものを渡されてもプレイする手段が存在しなかった。その事情を知って友人たちも私にはエロゲを貸したり情報を教えたりしなかったのだろう。

ところが私が高校に入学した2007年頃には状況が一変する。当時、親から安価なノートパソコンを買ってもらい、自室でネットを自由に見ることができるようになっていた。その頃からちょうどニコニコ動画が流行し始め、私も地方在住者でありながらすっかりアニメをはじめとするオタク文化に親しむようになっていった。

そんな流れの中でエロゲについても知るようになると、中学校で裏で流行していた「何か」がエロゲであった、ということに気づくのも時間の問題だった。

中学校でやりとりされていた物の正体を知った時、私はひどく後悔をした。当時エロゲをやり取りしていたクラスメートは私とわりと仲の良い連中であったのだが、エロゲに関しては自分だけ仲間はずれにされていた。「あの時、友人たちと秘密の趣味を共有して、もっと中学校の時に楽しんでおけば良かった。スタンド・バイ・ミーのような濃厚な体験を友人たちと持つことで、より関係性を深めておけばよかった。」そんなことばかりを当時は考えてばかりいた。実は当時は高校デビューに失敗し、友人が一切いない状態であった。そのせいでなおさら中学生時代を懐かしむようになっていたのである。

そこでせめて中学でプレイされていたと思われるゲームを今からでも追体験しようと思い、さっそく街のゲーム屋に向かった。狙うタイトルは『Fate/stay night』だ。これは原作は18禁ゲームではあったが、その時には全年齢版がPS2から販売されており、高校生でも購入は問題なかった。

購入してから自室で3日3晩ひたすらプレイしたと思う。怒涛の勢いだった。ところが感想はイマイチよろしくなかった。単にバトルロワイヤル物として戦闘や生き残り戦略を楽しむことは十分でき、その意味では傑作だった。しかし、文章が荒削りな点と登場人物が大人を含めて幼稚に思えてしまった点がどうも納得出来なかった。それ以降、その時の落胆のせいでエロゲやそれに類するゲームからは距離を置くことになる。それでもネットで見かけるエロゲの名前は常に気にはなっていた。

転機が訪れたのは大学に通うために東京で一人暮らしをするようになった2010年頃だ。この頃になると堂々とエロゲをプレイできる年齢になっており、一人暮らしという環境も気兼ねなくエロゲをするのに最高の条件だった。しかも大学の先輩や友人からエロゲの貸し借りが自由にできるときている。月に1~2作品ペースで作品を消化していった。

今にして気づくことだが、その頃周囲から勧められた名作ゲームや自分が気に入ったゲームは、どれも今流行しているものというよりも2005年前後に発売された古めの物が多かった。『Phantom』『Air』『パルフェ』『クロスチャンネル』『マブラヴオルタネイティヴ』『君が望む永遠』『つよきす』……どれも既に中古市場で安く売買されているものばかりである。もちろん2010年の当時に発売されたものもプレイしてはいたのだが、どうも勢いがない印象は否めなかった。

私がハマった作品群は虚淵玄タカヒロ星空めてお瀬戸口廉也らがライターを務める物が多かった。好きな作品を5本挙げるとすれば『君が望む永遠 』『キラ☆キラ』『さよならを教えて』『Forest』『 腐り姫 』になる。これら以上に革新的な作品はエロゲではもう出ないと思う。

特に『君望』の衝撃は大きかった。かなり古臭いハーレムゲームの基本形をなぞりながら、女性としてリアリティのある速瀬水月というヒロインを軸に、愛することの苦しみをこれほど表現できたゲームを他に知らない。他者との関係において摩擦係数ゼロであることが当たり前となっている現代のラノベアニメとはまったく異なる世界観であろう。私は『君望』を発売からちょうど10年後にプレイしたが、後にも先にもこれほど衝撃的で、感動し、評価できるゲームに出会うことはなかった。速瀬水月というヒロインの造形は見事としか言いようがなく、「女であること」のリアリティを見事にエロゲという制約において成立させている。エロゲにおいて他者としての女性のリアリティを確立できたのは『君望』しかなかったように思う。多くの他のエロゲもプレイしてみたが、大抵の作品におけるヒロインは男性の欲望の鏡像にしかすぎず、嫌悪感を抱くことが多かった。

実は私はエロゲにおいてこの種の「嫌悪感」をヒロインに感じることが非常に多かった。それ故、最初の部分だけプレイしただけで、結局受け付けないエロゲの方が相当数に及んでいた。その結果、『パルフェ』や『マブラブ』、(エロゲではないが)『クラナド』といった世間からの評価が高い作品も最後までプレイせずに終わってしまった。

ところで 2010年前後のエロゲに勢いがないと前に述べたが、ぎりぎり私が10代であった頃に(エロゲではないが)シュタインズゲートの感動を味わえたことは幸運であった。その当時は考察サイトや掲示板が多数存在し、多くの議論が交わされていた。私もプレイ直後の記憶と感激を濃厚に持ったまま、それらのサイトに入り浸っていた。

2010年頃に勢いがまだあったメーカーは『シュタゲ』『装甲悪鬼村正』を出したニトロプラスと『まじこい』を出したみなとそふとだったと思う。両社とも私の好きなメーカーであった。

みなとそふとのゲームに関して述べてみる。このメーカーのヒロインは男性の欲望の単なる映し鏡であるようにみえて、実際にはその傾向に最も反抗している人物造形のキャラクターばかりであると思う。みなとそふと作品はヒロインの主体性、人間性の尊重にかなり気を使っている節があり、その点を一番評価したい。ただ、あまりこの考えに賛同していただけることはないと思うが……

後はライアーソフトが細々としかし堅実に独自路線を貫いていた。2012年発売の『屋上の百合霊さん』は相当インパクトのある作品であった。少女漫画の世界観をゲーム化したこの作風は、ライアーソフト以外は真似できないであろう。

また、他にサーカスという会社の作品が人気だったようだが、私は肌に合わずほとんどプレイしていない。

エロゲが最後にオタク界で影響力を持った作品は2010~2011年発売の『WHITE ALBUM2』だったと思う。これは2chまとめブログで大々的に宣伝され、エロゲ批評サイトで歴代最高点を稼いだことが話題になった。しかし、似たような作風の『君が望む永遠』や『スクールデイズ』ほどオタクへの影響はなかったように感じた。私自身もプレイしたが無駄に中盤が長すぎて、きれいにまとまってある君望には及ばないと思っている。

長々と書いてきたが、私がエロゲを主にプレイした2009年~2012年の頃には他ジャンルへ影響を与えたエロゲはほとんど発売されてなかったと記憶している。数少ない例外を無理やり挙げるとすれば、皮肉なことに18禁ではない『シュタインズゲート』になるのかもしれない。次点で『WHITE ALBUM2』の名前も挙げてもよいかも。

正直、私の観測範囲は狭いのでどんどんご批判をして頂きたいです。そもそも私のアンテナは相当偏っているので、これは当時のエロゲ事情のごくごく一部を見ていただけに過ぎないと自覚しております。どなたか2010年代前半のエロゲ界の動向に詳しい方のご意見が聞きたいです。長文失礼しました。